SwitchBot代表インタビュー | 生涯をかけて1本の刀を研ぐ

【プロフィール】

SWITCHBOT株式会社 代表取締役社長 Connery Lee(コネリー・リー):16歳で飛び級により大学へ進学。大学で電子情報工学を学び、学生時代は数々のロボットコンテストに参戦。ロボット制作の経験を経て2011年にはシンガポール南洋理工大学で同学科の修士を卒業。2012年よりスマートホーム事業に従事し、2015年に指ロボットの「ボット」を発案し会社を設立、2016年に「SwitchBot」ブランドを立ち上げ今に至る。2022年現在、ユーザー数100万世帯突破、販売台数200万台達成。

大学卒業後、起業に至るまで約8年間スマートホーム事業に従事し、さまざまなロボット開発にも携わってきたコネリー氏。早期のスマートホーム製品は値段が高く操作も複雑であることに疑問を感じていたが、ある日、家族が不在で一人家にいた時、「長年のスマートホーム経験があるにも関わらず、電気のスイッチの自動化すら実現できていない」ことにショックを受け、この件をきっかけに起業を決意。「遠くにあるスイッチを押す指ロボット」の開発を皮切りに2016年「SwitchBot」ブランドを立ち上げる。競合製品の多くが設置の際に工事が必要で賃貸マンションに不向きであったり、設置方法が複雑でIoT製品に親しみのない人にはハードルが高いことなどを考慮し、「後付け」というスタイルを選択。社員3名による0からのスタートを切り、僅か5年でユーザー数100万世帯を達成したその軌跡について、同氏に伺った。

【インタビュー本文】

起業ストーリー「今日の業績はSwitchBot社とユーザーの共鳴によって創り上げたもの」

SwitchBot利用者100万世帯突破ということで、今の心境をお聞かせください。また、ここまで事業を拡大し好調な業績を収め続ける要因はなんでしょうか?

A:ユーザーの皆様には本当に感謝しかありません。利用者100万世帯、この素晴らしい節目を皆様と迎えることができた幸運に感銘しております。僕が創業当初から最も大事にしているのは「ユーザーの皆様の立場に立って製品の開発を行なう」ということ。今の自分に何ができるか、どんな技術を持っているかではなく、「ユーザーの皆様はどんな製品を必要としているのか」「暮らしを便利にするにはどんなものが欲しいか」を発想の出発点にして「じゃあ作ってみよう」「そのためには何が必要だろう」と展開していきます。つまり、ユーザーが欲しいものをまずは考え、それを実現するための戦略を練り、必要な技術や人材を用意する。そして製品ブランディングの段階では、具体的な利用シーンを提示し、「この製品を購入したら生活がこんな風になる」という情景をイメージしていただく。「SwitchBot製品を自宅に導入すれば、ベッドから起きなくていい」、この究極の「上質でスマートな生活」は僕自身の夢でもあります。ユーザーのニーズと僕の夢の方向が一致し、弊社の方でまずはそれに合わせた製品を作り、そしてユーザーから「もっとこうして欲しい」「こんな機能もあったら良いよね」とフィードバックをいただく。それに対しまた弊社が改善策を練りグレードアップしたものをユーザーへ提供する。そういうループのなかで弊社とユーザーが共鳴を繰り返し、創り上げられたものが「今日の好調な業績」という結果に繋がったのではないかと思います。

経営者としての信念・手腕「CEOに出来ることは、責任をとること」

起業以来、経営者として大切にしてきた信念はなんでしょう?

A:「長期的な未来を見据え、そこに価値を創造すること」です。遠い将来、どんな最終局面を迎えたいのかをしっかりと見据え、その目標に向かってブレずに今あるタスクをこなしていきます。それは、起業にしても会社のブランディングにしても同じことが言えます。目先のことばかり考えて、足元だけを見つめていたら、大きな方向を間違えてしまう。まずは自分が理想とする最終目標をしっかりとイメージすること。そして今手元にある問題や課題をこなしていく。よく「会社を経営していて一番大変だった出来事は?」と聞かれますが、厳密に言うと特にないです。もちろん、トラブルや失敗は常にあります。しかしそれは、今のトラブルや難関を解決したら、また次の課題が出てくる、という感じで波のように絶え間なく起きるものであり、云わば「タスク」だと僕は考えています。トラブルとは最終目標に向かってクリアしなければならない「To doリスト」。今の課題が最終目標に向かう道のりの弊害になるなんてことはなく、むしろ「今日はこのタスクをこなそう」という気持ちで挑んでいます。僕はトラブルや課題に対して、企業はもっと楽観的に捉えて良いと考えるタイプです。「生涯をかけて1本の刀を研ぐ」、僕の好きな言葉です。僕の一生をかけて一本の刀を研ぐ、僕の一生だけでは足りないなら、次の世代が研ぎ続ける。そして次の世代へ、ずっとバトンタッチしていき、1本の刀を研ぎ続ける。日本には創業100年以上を誇る素晴らしい会社が本当にたくさんあります。「生涯をかけて1本の刀を研ぐ」、これこそ日本の企業が、製造業が世界から称賛される真髄なのではないでしょうか。

経営者として心がけている経営采配は?また起業家に必要な素養を教えてください。

A:弊社では、必ずすべての社員が自分の専門分野で力を発揮できるようにしています。企業でありがちなのが、マルチになんでもこなせる社員を雇用し、一人の社員が一人二役も三役もしているパターン。そういう方はもちろん優秀ですが、逆に言えばすべて及第点に達しているけれど、全部満点には届いていないということ。国語も算数も全部80点だけど、100点を取れる科目はない。僕は、国語が100点の人は国語を、算数が100点の人は算数を担当するのがベストだと考えております。社員の長所を最大限活かし、苦手な分野はまたその分野の得意な人に任せる。なので弊社の社員はみんな自分の役職のプロフェッショナルなのです。なので、相談されればアドバイスはしますが、基本的に口は挟まない。全面的に信用し、自由に能力を発揮してもらう。また、社員には常日頃「実際の状況に基づいて事物の真実を求める」ように徹底しています。CEOから平社員まで、上下関係や年功序列のようなことは一切ありません。実力と結果をきちんと評価してもらえるシステムは、社員のモチベーションにも繋がると考えているからです。起業家に必要な素養は、先ほども申しましたように、CEOなのでCEOにできることを全うするようにしています。CEOにできることとは「責任を取ること」。トップに立つ人が出来ることは、社員を信頼して任せ「最後は僕が全責任を取るから大丈夫」と大きく構えて盾になってあげることだと思います。それが僕の考える起業家に必要な素養です。

SwitchBot社に関するエピソード「日本市場はユーザーと販売者・製品が一緒に成長できる環境が整っている」

日本が重要な市場として育まれた理由はなんでしょう?

A:日本市場の特徴のひとつに、「リピーターやマニアの方が多い」という点が挙げられます。具体的には、例えば海外市場ではどんな製品も、「消費品」として利用されることが多い。消費者は基本的に製品に対する関心が低く、受け身なため、製品に期待や要求は特になく、質が悪ければ運が悪かったとして捨て、こんな機能が欲しいと思っていても、製品は売る側の都合で生産される物だからと諦め、フィードバックはしない。その点日本のユーザーは、購入した製品のレビューを熱心に行い、使い勝手が悪ければ、原因を追求し、カスタマーサポートに問い合わせる。こんな機能が欲しい、もっとこうしたら?という意見を会社にフィードバックしてくれる。何よりも、製品への要求や分析の視点が良い意味でとにかくきめ細やか。具体的なレスポンスがあるから販売者とユーザーと製品が一緒に成長できる循環が整っているわけです。良くも悪くも製品に対しての愛情や熱意のある日本ユーザーだからこそ、時間をかけて口説き落とし、長期的な信頼関係が生まれるのです。そのような日本の市場環境が、僕の大切にしている信念「生涯をかけて1本の刀を研ぐ」と合致したことで、自然と重要な市場として育まれたのではないでしょうか。

SwitchBot社を立ち上げてから今日に至るまで、一番うれしかった出来事は?

A:うれしかった出来事はたくさんありますが、一番うれしいのは「ユーザーの皆様に認めていただいた」と実感した瞬間です。特に印象的だった出来事は、小児麻痺を患ったユーザーの方から感謝のお手紙をもらった時のこと。そこには「以前は日常のあらゆるシーンで介護の方がいないと生活も困難だったのが、SwitchBot製品を導入してからは介護者がいなくても多くのことを出来るようになり、自分で生活をすることができるようになった」と書いてありました。SwitchBot製品との出会いが人生を変えてくれたとおっしゃってくれたんです。あの日ほど「あぁ、頑張ってきて良かった」と思えた日はないです。誰かの人生を変えるほど役に立てた。すごく感激しました。

知られざる素顔「パソコン革命にも、スマホ革命にも、参加できなかったけど、次世代のIoT革命を担う人物になりたい」

どのような幼少時代を過ごしましたか?一番印象に残っている出来事について詳しく教えてください。

A:幼少時代はとにかく好奇心の旺盛な子どもでした。僕は理系だったので、部屋でよく科学や物理の実験をしたり。ある日部屋で液体実験をしていたら、突然緑色の煙がもくもくと立ち上がってびっくりしたなんて出来事がありました。その煙を吸ってから数日間は、ずっと喉の調子が悪かったです。印象に残っているというより、真夏にクーラーのガンガン効いた部屋でひたすらPCゲームをしていたことが一番の思い出です。1998年頃のことだったと思います。パソコンに初めて触れたときは、もう青天の霹靂でした。パソコンという存在にずいぶん夢中になりました。今思えば、その頃からぼんやりと今やっていることの構想が生まれた気がします。僕は「パソコン革命」にも「スマホ革命」にも参加できなかったけど、次世代の「IoT革命」を担う人物になりたい。そんなことを意識した瞬間でした。

休みの日は何をしていますか?趣味は?

A:趣味は特にないです!休みの日はどこにも出かけません。インタビューの最初から一貫して主張していますが、僕はすごく出不精で何をするのも億劫なタイプです。「家→会社」の2点往復の繰り返しで、会社まで徒歩3分の距離に住み、365日ほぼ毎日会社に来ています趣味とは言えませんが、ベッドの上でスマホゲームをしたり、PCゲームをしたりしていると休みの日がいつの間にか終わっていたりします。あとは三国志が大好きで、三国無双とかよく遊んでいます。

今後について「IoRTで世界のスマートホーム業界を牽引する」

今後の目標は「世界市場でIoRTの先駆者を目指す」ことだとお聞きしました。IoRTとはどのようなものなのか、その概念について教えてください。

A:IoRTとはモノのインターネット(IoT)とロボット工学の融合です。簡単に言うと、家庭や職場、公共施設などあらゆるところで多様なロボットが活躍し、人が行ってきた定型業務をロボットが代替・支援すること。例えば、手を伸ばして遠くの物を取ったり、指でスイッチのON/OFFを操作したり。そうした動作を代わりに行なうロボットを暮らしに取り入れることで、生活がより豊かで便利になる、そんな画期的な概念を指します。

IoRTを用いて世界のスマートホーム業界をどのように変えていくことができるのでしょうか。

A:人間のさまざまな動作を代替するロボットにIoT技術をアレンジし、日常のあらゆるシーンに導入することで、物理的作業はSwitchBotに任せ、人は人にしかできない作業に没頭できる世界の実現を目指します。ここ20年、世界を代表する大手企業の多くがロボット開発に力を注ぎ、人類の科学技術を大きく発展させる精巧なロボットがいくつも誕生しました。しかし、それだけ高度な技術の搭載されたロボットを作ることは非常に難しく、一般家庭に普及されるなんて夢のまた夢。でも、指の代わり、足の代わり、腕の代わりになる、人体の局部的な動きを再現するロボット製品の開発であれば、実現できます。SwitchBot誕生のきっかけとなったアイデアは指ロボットである「SwitchBotボット」。指の動きを再現した「ボット」をはじめ、目の代わりとなる「見守りカメラ」、人の手足に代わり掃除を行なう「ロボット掃除機」など、SwitchBotではIoRTの概念を具現化する製品を多く生み出してきました。ユーザ一人ひとりが、異なるニーズに合わせて気軽に暮らしへ取り入れることができるよう、「後付け」という形を選びました。どんなに高度な技術も、ハードルが高く、導入が躊躇されるようであれば意味がないからです。今後の構想としては、例えば洗濯物をたたむ、加湿器の水を自動で交換するなど、今ある製品ではまだ出来ていない作業をカバーする製品を展開していく予定です。ぜひ、お楽しみにしていてください。

最後に、SwitchBotユーザーの皆様へひと言。

A:ユーザーの皆様、弊社の製品をご利用いただき、深く感謝申し上げます。これからも皆様の期待に沿える製品を開発していきたいと思っておりますので、どんどんフィードバックしてください。未来のスマートホームを牽引するのは皆様です。そして皆様の声を、夢を実現するのが我々の役割です。ぜひ、これからも我々とともにSwitchBot社を育んでいっていただけたら、幸いです。これからもどうぞSwitchBot社をよろしくお願い申し上げます。